推しを推す、そして万物に感謝する。

元書店員。日常のオススメやアレコレの話を。

抜歯抜糸ナイトゲーム2(痛い表現があります)

お疲れ様です。

 

 

前回までのあらすじ

 

歯医者さんのゆるめの口調に助けられ、ノリで右上の親知らずを抜いた私。

こんな感じなら残り3本も楽勝だぜ、と口では言いつつ、「下の歯は手術が必要」という説明にビビり倒す。

新型コロナウイルス感染症という抜歯を先延ばしにする言い訳が生まれたものの、私の左下の奥歯には、必ず食べた物が挟まる様になっていて……。

 

 

 

……。

 

というわけで、近所の歯医者さんを探した。

 

後で聞いた話だけれど、痛みが出ている状態では処置をしてくれないところもあるらしい。

痛みよりも先に煩わしさが出てくれて良かった。

 

 

1本目抜歯の時は、まだ書店員だったから、基本的に平日休みだった。

 

歯医者さん行き放題。

予約取り放題。

混まない。

余裕。

ありがたい。

ひゃっほう。

 

いや、過去形だわ。

ありがたかった。

 

私は、平日休みが割と好きだった。

 

現在の仕事は土日休みであるからして、そんな上手くはいかない。

 

会社の帰りに行けるのがいいのか……

遅くまで診療しているところがいいのか……

土日もやっているところがいいのか……

 

検索する。

 

 

時間帯や場所を考えるのは、距離や通うのに都合がよくないと大変だからだ。

 

でも、ふと思う。

それだけでいいのか?

 

だいじな事忘れてないか?

 

優しくしてくれるところがいいんじゃないのか?

 

そうだ、小児歯科もやっているところなら、ヨシヨシしてくれるんじゃないか?

 

 

などと甘いことを考えながら探し続けた結果、運よく家の近くに夜遅くまでやっている歯医者さんがあった。

 

割と新しいけれど、サイトを覗くとなんだかキラキラしていて、色んなことをやっていて、かっこいい、良さそうじゃない?

値段も、たぶん高くはない。

相場が分からないから、ネットで仕入れた知識だけが頼り。

 

そんなアホっぽい判断基準をもって、予約した。

 

 

 

職場の先輩は、親知らずバイバイ経験者である。

歯医者さんを見つけました、と報告すると、どこにしたのか聞かれたので答える。

理由も答えた。サイトがめっちゃ気合入ってて、すごそうだったので、って。

 

「歯医者さんのサイトってみんななんかすごい感じのところ多いよね」

 

とのことだ。

なんだ、みんなどこもキラキラでカッコいいのか……。

 

 

ビビり散らして延期に延期を重ねた抜歯である。

初めての来院ということもあり、久々に口腔内のレントゲンを撮った。

 

見事に真横に生える奥歯。

 

お変わりないご様子。

 

レントゲン写真を元に、先生が説明をしてくださる。

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「くりこさんの歯はこんな感じでほとんど埋まっているからね」

「ハイ」

 

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「まずこんな風に歯を切ります」

「へぇ(歯を切ります???????????????)」

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「それで、埋まっている部分を取り出すために、歯茎をちょっとずつ切ります」

「あっ、ハイ(あっ、ハイ)」

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「そうしたら器具が入る隙間が出来るので」

「ハイ」

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「ぐっと起こして歯を抜きます」

「へぇー!」

 

 

「最後に縫ったらおしまい、です」

「ハイ」

 

 

柔らかい話し方をする男の先生で、なんだか安心感がある。

この日は説明のみで、予約を取った。

 

「じゃあ夜7時に来られるかなぁ?」

「えっ、あっ、ハイ」

 

仕事休まないかんかな、とか思っていた。

まさか夜からやってもらえるとは。

 

しかし7時半に閉まる歯医者さんである。

30分で工事が終わるのか……。

 

「あ、やっぱり6時半で来られるかなぁ、過ぎちゃってもいいから」

 

そうだよね、30分で全部やるって大変そうだもの。

 

 

 

決戦の金曜日、昼休みには念入りに歯磨きをし、飲み物はお茶にした。

仕事終わりに歯磨きをする時間はなさそうだ。そのまま歯医者に行くことを考えると、甘いものを摂取するわけにはいかぬ。

 

 

定時のチャイムと同時に退社をし、私は歯医者に向かった。

 

 

 

懐かしい麻酔注射のための麻酔。

舌の横もじんじんしてくる。

 

この歯医者さんもBGMは己の口内で行われている工事現場の音のみ。

 

 

さすが、抜くだけの前回とは違う。

 

歯医者さんに行ったことがある人なら誰もが耳にし、無意識に眉が寄ってしまうドリルの音。

 

ビギィィィィィィィィィガガガガガガガガガガガ

 

みたいな、振動している機械の音が自分の口の中からしてくる。

 

 

何かをされている、というふんわりとした認識のもと、先生の説明を思い出して、今果たして何が行なわれているのかを想像した。

 

最初は、出ている頭の部分を切るんだったよな。

 

歯を、切る……?

 

 

え、切るの????

 

歯を?????????

 

 

同じテンションでその切れ味のものが歯茎にも当たったら、私は死ぬんだろうか、などと考えながら、静かにBGMに耳を傾ける。

 

何度も「頑張って口開けて―」と言われる。

 

歯も、歯茎も、切られたタイミングは全く分からなかった。

その代わりと言っては何だが、埋まっているものを引っ張り出そうとしている感覚は良く分かった。

 

あ、今コンクリートを割るのに使うあの重機使ってんじゃないかな、と思うくらい

 

 

ガガガガガガガガガガガゴッガッ

 

 

と何かを破壊する音が聞こえる。

 

アゴの骨ごと前に引っ張られる感覚。

 

歯って、本当にしっかり根が生えているものなんだなぁ、というのをしみじみ感じた。

 

 

しかし、しみじみ、などと悠長にしていたら、どうにも手順が多い。

 

① 歯ぐきから出ている部分を切る

② 歯ぐきを2か所切開

③ 埋まっている部分を引き抜く

 

のはずなのに、

 

③ 埋まっている部分を引き抜く

③ 埋まっている部分を

③ 埋まっている、うま、埋まっている、部分を、ね、ちょっと待ってね

 

みたいな足踏みを感じる。

 

ぬぬ、何が起きているのだ。

 

 

歯を取り出した後で、切ったところを縫って。

止血のためにガーゼを噛んでいて、と言われる。

 

痛みは全くなくて、危機感が欠如しているのか怖くもなくて、それでも手術が終わると涙が浮いていた。

骨をぐいぐいされたりすると、勝手に涙が出るのだと知る。

 

 

 

 「頑張ったねー、これ、抜いた歯ね」

と先生が歯を乗せた手を視界に入れてくる。

 

見ると、3つに分かれた歯が転がっていた。

 

埋まっていた歯の足部分(?)が簡単に抜ける角度になかったらしく、さらに半分に割る必要があったらしい。

 

③の段階での足踏み、これか(笑)

 

 

 

術後の止血時間で20分。 

手術そのものは恐らく10分くらい?

 

仕事終わりに、30分くらい寝ころんで、不安と引き換えに親知らずを取り除いてもらった、ということになる。

 

 

思っていた以上に、時間がかからなかった。

 

 

化膿止めの薬が出た。

痛み止めの薬も。

あと、うがい薬。美味しくない。

 

幸運なことに、頬は腫れなかった。

痛み止めも、とりあえず飲んでおくか、というくらいだった。

 

寝てる最中に痛みで起こされたら嫌だなぁ、と思って寝る前に飲んだから、

もしかしたら薬を飲まなかったら物凄く痛かったのかもしれない。

 

止血の妨げになるので、血流が活発になる入浴は手術の日は禁止。

 

 

次の日にもう一度歯医者さんに行って、状態を見てもらう。

口の中を2か所縫われていると、口が開きづらい。

 

「大丈夫そうだね、お風呂もう入っても大丈夫です。あんまり強くうがいしないでね、あと、縫ってあるところに歯ブラシ当てないように気を付けてね」

 

 

縫われたところに歯ブラシを当てないのは、とても難しい。

当たると痛い。

そろりそろり、と歯を磨く日々が始まった。

 

手術中に無理矢理大きく開けられた口、左側の頬、アゴ?、が筋肉痛を起こしているように痛い。

抜歯は顔の筋トレなのかもしれない。

 

 

1週間後、抜糸。

これもまた、仕事終わりに。

 

早い。そんなものなのか。

1週間でいいのか。というか、また仕事終わりのほんの少しの時間で。

 

麻酔もない作業なので、ちょっとドキドキする。

 

「じゃあ糸を抜いていくねー」という先生の声。

 

パチン

 

あ、今、糸の結び目? が切られたのかな

糸が抜かれる感覚はするのかな、しないな、まだかな

 

パチン

 

あれ、二回目だ?

今のパチンは何の音だ???

 

 

「糸、抜けたよー」

 

「あっ、ハイ(?????????????)」

 

 

何にも感じなかった。私の感覚が死んでいるのか、みんなも感じないくらいのものなのか。

 

 

 

 

というわけで、無事に2本目の親知らずが無くなった。

 

 

もう痛みはない。

あの子が生えていた場所には、ぽっかり穴が空いている。

術後は右側でばかり噛んでいたけれど、しばらくすると「左側でも咀嚼したい……!」という願望が生まれた。

なんだか不思議な感覚だった。

 

今はもう左でも噛んでいる。

 

食べた物も挟まらない。

嬉しい。

 

その代わりに、食べた物は空いた穴にハマる。

ぬぅん。 

 

……まぁ、挟まるよりはいいか。

 

 

と、最初は気になっていたけれど、ハマるのもだんだん慣れてくる。

 

米粒がハマる。

豆もやしの豆がハマる。

 

慣れてくる。

 

 

でも、ひき肉がハマるとちょっとドキドキする。

何かがハマったままで穴が塞がることはない、とは聞いているけれど。

 

 

その肉では、そこの損失は埋められないんだよ、と強く念じてしまう。

 

 

 

 

あ、そういえば、抜糸後にアゴの左側が緑色になった。

内出血したところの治りかけの感じの緑色。

 

つまりその通りらしく、内出血した色が外側に出てる、みたいなことらしい。

押しても痛くはない。

知らないうちにそれも綺麗に消えた。

変色している間も、日中はマスクをしているから顔がほとんど外に出ていない。

目立たなくてマスクに感謝した。

 

 

 

 

これから親知らずを抜く人が、これを読んで何を思うかは分からない。

歯医者さんによっても色々違うだろうし、そもそも親知らずの状態だって人それぞれなのだから、私がこうだった、ということと、他の人がどうなるかは全く関係ない。

 

でも、皆さんが出来るだけ安心して安全に親知らずとバイバイできたらいいな、と思う。

 

 

右下の親知らずも、この調子で抜くぜ!

 

……と思っていたのだが、ご飯をよく噛むことが出来る、という幸せを今噛み締めているところである。

もうしばらくこの幸せに浸りたい。

 

先生には「痛くなる前に来ますー」とか、またもや余裕のある言動をお見せしていたけれど、うぅん、ほら、ね。

 

毎日行われる『食事』という行為に気を遣うのは、思っていた以上に疲れる、ということを知ってしまった今、なかなか次もやるぞ!とは思えない。

 

 

右側は、食べた物も挟まらないしね!!!!!!

 

 

挟まる様になったら行こうかな……。

 

 

 

空いた穴は、半年から1年くらいかけて塞がるらしい。

 

穴が塞がるまで、どうにかひき肉など別の肉を代用品にしようと身体が反応しないことを願いつつ、

 

 

感謝の気持ちをもって、しっかり咀嚼します!!!

 

 

 

じゃがりこ、美味しい!!!!!!