推しを推す、そして万物に感謝する。

元書店員。日常のオススメやアレコレの話を。

本のエンドロールを読みました

お疲れ様です。

ご無沙汰しております。

 

いつぶりだろう、間あけすぎ……。

 

見た目重視のキーボードとの信頼関係も、また初めから築かなくては。

 

今回はタイトルの通りです。

読みました。

 

 

本のエンドロール(講談社文庫)

著者:安藤祐介 出版社:講談社

ISBNコード:978-4065230688

彼らは走り続ける。機械は動き続ける。電子化の波が押し寄せ、斜陽産業と言われようとも、この世に本がある限り。

印刷会社の営業・浦本は就職説明会で言う。「印刷会社はメーカーです」営業、工場作業員、DTPオペレーター、デザイナー、電子書籍製作チーム。構想三年、印刷会社全面協力のもと、奥付に載らない本造りの裏方たちを描く、安藤祐介会心のお仕事小説。

引用元 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000190717

 

随分と前に買っていたのですが、ようやく読むことができました。

内容について話しますので、少しのネタバレだって許されるものか! という方は、その、ごめんなさい(笑)

 

あらすじの中にあった就職説明会ですが、この作品の冒頭部分にあたります。

学生に対し、浦本は「印刷会社はメーカー」「本を造るのが私たちの仕事」と熱い思いを語る。

それとは対象に同じ営業部の仲井戸は「夢は、目の前の仕事を毎日、手違いなく終わらせること」と答える。「本の中身を作るのは作家や編集者であり、我々はそれを書籍という形に落とし込んで届ける作業工程を請け負っているだけ」と。

この淡々とした言葉を覆すには、営業トップの仲井戸を越える仕事ぶりを自分ができなくてはいけない、と浦本は気合を入れる。

 

就職説明会だし、学生さんも実際働いている人の、浦本さんのような熱い思いを聞きたいんじゃなかろうか。

仲井戸さんの日々の仕事の大切さみたいなのを聞けるのもいい機会だと思う。

でも、「夢はなんですか?」という質問に対して仲井戸さんの答えが返ってきたら、なんというか、ちょっと寂しい気がする。

 

2人の言った『夢』がどういうことなのか、最後まで読んで、わぁぁぁぁいいなぁ……となりました。

日々の仕事をつつがなく終わらせることがどれだけ大切なことか。

どれだけたくさんの人が関わって本という形が作られて、私たちの手元に届いているのか。

 

小説を読むと『どんでん返し』だとか、一発逆転のチャンスがあったり、そういった展開がよく見られるのですが、この作品には一切そういうものがなかったように思います。

 

失敗するときは、ちゃんと失敗するまでの道筋があって、成功するときにもちゃんとその流れがある。

日々の積み重ねがその結果を作っていくのだというのを作品を通して感じました。

仲井戸さんのおっしゃる夢、心構えに繋がるものだ。

 

書店で働いていたって、お会いするのは出版社の営業さんまでです。

本を形作る部分に携わる、印刷とか、製本とか、文字で見たって全然想像ができなかった。

 

本の奥付を『本のエンドロール』と称しているのですが、私はこの本を読むまで、奥付に載っている情報からたくさんの人の存在を想像したことは、お恥ずかしながらありませんでした。

 

これからは少しでも想像できたらいい。

きっと本の厚みが、手のひらにもっともっと厚く感じられるような気がします。

 

文庫版では特別掌編が追加されています。

『本は必需品』というタイトルです。

 

本編を読んできて更にその掌編を読んだら、この人たちは実際にいる人たちの話だ、フィクションだけど、限りなくノンフィクションに近いものだと思いました。

作者さんの取材量と、それに応えた現場の皆さんの熱い気持ちが詰め込まれているなと。

 

あと最後の最後が粋な構成だったなぁ。

感動をさらに上げた気がします。

 

ぜひもっとたくさんの人に読んでほしい。

 

 

そういえば……読んでいる中でショックなことがあって。

それは電子書籍の存在についてなんですけれど。

 

紙の本と電子書籍の売上の話が出てくるんですけど、その時に自然と、ものすごく自然と

電子書籍への挑戦かぁ」

って思ってしまって。

自分でそれがやけにショックでした。

 

別に思ったことがないわけじゃないし、電子書籍の普及の勢いはよく知っているし、自分だってたまに電子書籍買うし、便利だし。

でも「挑戦」という言葉がなんだかすごく、あぁーって。

 

自分の中で紙の方が挑戦する側なんだなぁって。

 

……まぁ、この思考は倒産した会社にいたのが原因として大きいかもしれないんですけど(笑)

 

 

紙の本はゼロにはならないって思ってる。

 

「ゼロにはならない」って考える前には「ゼロになることはあるだろうか」っていう前までは考えもしなかった危機感がある。

 

この業界だけじゃなくて何だってそうで、何か新しいものが出てくるたび、何かが流行るたび、みんな既存のものは負けねぇぞって頑張ってる。

新しい物の方も、おんなじように負けねぇぞって頑張ってる。

 

いつかの誰かが好きだったものが、何一つ淘汰されない世界ならいいのに。

 

 

私は、紙の本が好きです。

手に乗る重さと、ひと目でどこまで進んだか分かる触れるページ。

雨の日でもドキドキしながらカバンに入れてしまう短期間の相棒。

片付けようとしても嵩張って、目についてしまう存在感。

 

あと、そんな本がたくさん並んでる本屋さんも好き。

 

愛しい……大好きだ。

 

読書量、戻したいな。

もっとたくさん読みたい、と改めて思いました。

 

 

んーーーー頑張ります。

 

本がもっと好きになる作品です。

 

動画もどうぞ。

https://m.youtube.com/watch?v=m8gYHGwbVQE

 

少しでも、本だけに関わらず、モノの完成までに携わる人たちの存在を想えますように。