『店長がバカすぎて』をようやく読みました。
お疲れ様です。
朝晩が涼しくなってきました。
コロナワクチンの2回目がもうじきやってくるので、そろそろ冷感タイプの敷布団を交換するべきかもしれません。
熱が出ると寒気がすごいと聞き及んでおりますので、今のままでは恐らく凍えることになります。
いや、屈しないで戦ってみてもいいんだけれども、変に身体を悪くして誰かに助けを求めなくてはいけなくなったら困るので、ちゃんと大人として上手くやり過ごしたいとは思っています。
さて、今日の記事ですが、表題の通りです。
『店長がバカすぎて』を読みました。すごく良かったので、オススメさせてください。
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店長がバカすぎて(ハルキ文庫)
ISBNコード:9784758444262
谷原京子、28歳。吉祥寺の書店の契約社員。超多忙なのに薄給。お客様からのクレームは日常茶飯事。店長は「非」敏腕で、人を苛立たせる天才。
毎日「マジで辞めてやる!」と思いながらも、彼女は今日も出勤する。
2020年本屋大賞ノミネート作品です。
めちゃくちゃ話題になっていたし、評価も聞いていたし、それでも私はいつも通り単行本は買わないで、自分が買いすぎて追いつかなくなった部屋に積まれた文庫本をせっせと読み続けていたので、文庫化してようやく読むことが出来ました。
今まで書店を舞台にしてきた作品を見かけるたびに、
あっ、面白そう
と思って手を伸ばしていたのですが、今回気が付いたことがあります。
今まで読んできた書店モノは、どちらかと言うとミステリ寄りだったんだな、ということです。
今回この『店長がバカすぎて』は悪い意味ではなく、読んでいて5割は心が苦しかった。
それはたぶん、お仕事小説としての側面がけっこう出ていたからだと思っています。
冒頭、主人公である谷原さんがイライラしているところから始まる。
契約社員でやることは膨大で、それでもアルバイトと同じ時給換算。
店長は役に立たない。
厄介なお客さんは毎日来る。
朝から来る。
契約社員だからアルバイトとは立場が違う。
頑張らなきゃ。
くそ、店長がバカだ。
なんでコイツ神経を逆なでするようなことを言うんだ。
そんな感じで、辞めてやる、辞めてやる、と思いながらも、仕事が好きで、本が好きで、一緒に働く女性の先輩が好きで、実際に辞めるには至らない。
覚えがありすぎる。
契約社員の立場ではない。
月給をもらっている身であり、アルバイトの子たちに指示を出す立場の自分として、その苦しみには覚えがありすぎる。
私は辛くなかった。
でも安い賃金で、こんなにも働いてもらっている、という申し訳なさが永遠に無くならなかった。
私は職場の人に恵まれていた。
学生だったアルバイト時代、今の私と同じくらいの年の人がアルバイトをしていて、その人は夜にも別のアルバイトをしていた。
大変そうだと思ったけれど、他の良い条件の仕事がたくさんあるのも知っていたけれど、辞めればいいのに、とは思わなかった。
その人(以下Fさん)も谷原さんと同じで、本が好きで、仕事も楽しそうで、私もFさんと仕事をするのが好きだったから。
すごく良くしてもらった。ご飯も一緒に行ったことがあるし、カラオケとか行って遊んだりした。
私は本屋でしかアルバイトをしたことがないんだけれど、他の求人広告が貼り出されているのをチラチラ横目で見ることはあったし、本屋って時給安いよなぁっていうのは学生ながらに感じていた。
今よりも最低賃金安かったし、他のお店の求人で見るような『土日、夜の時間帯は+○○円』みたいなこともなかった。
ある日大きな衝撃を受けた日があった。
仕事終わりにスタッフ3人で晩御飯を食べた時のこと。
3人というのは、
当時正社員になったばかりの私、
異動してきた若い先輩社員さん、
アルバイトスタッフで先輩社員さんよりも年上のFさん、の3人。
ふとお金の話になった。
私はまだ初任給も入っていないようなタイミングで、何なら自分が最初にもらえる金額もちゃんと把握できていない。
Fさんが「どれくらい貰えるんだろうね?」みたいなのを気軽に聞いたんだったと思う。
もしかしたら、私が貰える最初のお金がイメージできるように、先輩社員さんに聞いてくれたのかもしれない。
本当に優しくて、私のことをよく気にかけてくださる方でした。
具体的に聞きたかったわけじゃなかったと記憶しているのですが、先輩社員さんは「たしか、初任給は○○円くらいだったかと」みたいに答えた。
流石にリアルタイムでもらっている給料の話は生々しくなりそうだし、私も「後輩の参考のために」って思ったら同じように答える気がする。
その先輩社員さんの、最初を思い浮かべながらの大体の数字を聞いたあと、すぐに、私の隣に座っていたFさんが
「わ、ごめん」
って言った。
横を見たら、Fさんの目からボロボロと涙がこぼれていて、
「ごめん、金額聞いたらビックリして、なんか涙出てきたw」
って顔を両手で隠した。
その内側から「そっかぁ、そんなにもらってるんだ」「情けなくなっちゃった」という呟きが聞こえてきて、当時の私は何とも言えない気持ちになったのでした。
元々あった気持ちではあったのですが、その出来事があったからか、
アルバイトの子たちには、どうにか楽しく仕事をしてもらいたい
という思いが強くなりました。
給料の安さは私の力では変えられない。
せめて楽しく、嫌な思いは出来るだけさせないように、学生さんはせっかくだから成長できるように。
変に責任を感じさせないように。
給料の安さを嘆きつつも、でも、あのお店でアルバイトできて良かったなと思ってもらえるように。
『店長がバカすぎて』を読んで、なんだかそういう自分が考えていたこととか、望んでいたことをわーーーーーっと思い出して、
考え方として間違ってなかったんだよな
でも楽しいばかりにはさせてあげられてなかったよな
って当時を振り返って、心がギュッとなりました。
安い給料であんなにしっかり働いてくださったスタッフの皆さんには、本当に今でも感謝しています。
皆さんお元気だろうか。
そんなことを思い出しながら読んだ前半は、変なタイミングで泣きそうになったりして、苦しい読書体験でした(笑)
後半から、ちょっとずつ内容に没頭できました。
そこからはビックリするくらいに楽に文章が読めたし、めちゃくちゃ面白かったし、なんにせよ最後までイッキ読みでした。
結論として、ああ、面白かった、のひと言に尽きます。
前半部分の苦しかった、っていう感想も、悪いものではありません。
書店業界の現状を真っすぐに見て、捉えて、描いてくれる心強さみたいなものを感じます。
作中で主人公が、自分の辛さを共有できる人がいると頑張れる、と次の日の仕事に向けて前向きな気持ちになるシーンがあります。
そういう事かなと思います。
書店で働く人以外にも、内情を見ている人がいる、というのは、なんだか心強い。
主人公の年齢が28歳っていうのが、また、その不安分かるよっていう年齢。
結婚が、とか、これからの自分は、とか、30歳辺りで誰もが抱える心理的な崩れがあるそうで、アラサークライシスという立派な名前すらあることなのだと、私はたまたま彼女の年の頃に知りました。
そういう不安感が誰しも来るものだと知っているかどうか、というのは心の安定にはかなり影響があるもので、もちろん知っていた方が「そっか、みんな一緒なんだ」という安心に繋がる。
私は偶然にも知れたので、残念ながらほとんど焦ることなく、今に至る。
最近ふと『楽』を体現したような人間になりてぇ……と思ったりして、私がこれだけ自由にしているのを見て、私の近くの、変に焦ってしまっている人や、嫌な不安感に苛まれている人が
アイツなんであんなに余裕なんだ、
なんで私ばっかり頑張らなきゃって思ってるんだ、
おかしくないか?
もしかして私、もっと楽にしていいんじゃないか?
って肩の力を抜いてくれるか、もしくは
アイツよりマシだな
って心に余裕を持つ原因になれればいいなと、割と本気で思っている。
今後の仕事って話をするなら、私も他人事じゃないし、それは今後の生き方とも言えるわけで、そうすると誰にとっても他人事じゃない。
彼女が、結局のところ本が好きで、仕事が好きで、だから辞められないんだ、っていう気持ちを持っていてくれることが、辛い思いをしている彼女には申し訳ないけれど、嬉しい。
共感しかない。
安月給だろうがなんだろうが、また本屋で働くのもいいよなぁ、って思わせてくれる作品です。
お仕事小説としても、ミステリとしても、オススメの1冊です。
ライトな文体も、助かる。
読み終わって、本を閉じて、目に入った表紙がまた良い味を出している……。
ぜひ読んでみてください。
改めましてリンク張っておきます。
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また1冊、手放せない本が増えました。
感謝申し上げます。
ん~、もうすぐまた時短勤務が終わりつつある予感。
早寝早起きの練習をしはじめなくてはな。
おやすみなさいませ!