抜き打ちテストが怖い話
お疲れ様です。
ショッピングモールに行ったら、人が倒れていた。
通路の真ん中に一人倒れていて、その横たわっている身体の両脇に膝をついた女性が二人。
「お困りですか、お手伝いはいりますか」と思わず声をかけると、左側の女性が勢いよく手をあげた。
「助けてください」
の意味かと思ったら、
「大丈夫なので放っておいてください」
という制止の手だと気が付いた。挙手かと思われた手は、私の顔に向かって手のひらを見せる形で止まっていた。
あんなに強い拒否、拒絶のこもった視線を受けることはなかなか無い。
貴重な体験をしました。
目は口ほどに物を言う、という言葉が思い起こされて、伝えられてきた言葉って凄いなと思った。
時代が変わろうと、今の人間にもしっかりと意図が伝わる。
その場を離れながら、冷静に考えればまぁ、助けはいらなかったんだろうな、と遅れて判断できた。
店舗の真ん前で人が倒れているわけで、店員さんがスルーしているのもおかしいし、言われてみれば両側にいた女性たちも慣れた様子があった気がする。
言われてみれば、だけど。
ものすごい力強い目を向けられたわけですが、うっかり声をかけてしまったお二人には悪いことをしたな、とは思いつつ、まぁ、声、掛けることができて、良かった、かな、とも思っている。
もしかしたら、倒れた直後でお店の人も気が付いていないタイミングだったかもしれないし、それは声をかけたタイミングでは分からなかったことだし、今度はちゃんと周りや状況を見てから声をかけることも出来そうだなって分かったし。
言い方は悪いけれど、緊急性のある場面を『練習しておく』『体験しておく』ことって難しいと思うから、そういう場面に出会えてよかったと思う。
思わず声をかけてしまうほど、『大きい身体の人が公共の場で横たわっている』っていう状況は視覚的に衝撃だった。
知的に障害があったのかもしれないし、貧血などで倒れ慣れている場合もあるかもしれない。
(以前、電車で倒れ込んだ人に対して連れの人が「あ、大丈夫です、次で降りますから」と凄く慣れた様子で対応していたところに遭遇したことがある。)
色んな人がいる。
色んな考え方の人がいる。
色んな文化がある。
出来ること・出来ないことは人それぞれ違う。
そうやって自分の中の固定観念を壊しつつ、でも「人はそれぞれだから」と何もかもを受け入れて考えることを止めてしまうわけではなくて。
違和感を覚えたことにはちゃんと反応していかなくては、大切なときにうっかり何かを見過ごしてしまったり、対応が遅れてしまったり、するんだろう。
『受け入れること』と『違和感を持つこと』を同時に……?
一体何を言っているんだ……。
違和感っていう言い方は良くないのかな、悪い意味ではないです、ふと引っ掛かること、くらいの意味です。
とにかく、そういう事がしたいらしいので、頑張りたい。
跡を消す(ポプラ文庫)
著者:前川ほまれ 出版社:ポプラ社
ISBNコード:9784591167298
気ままなフリーター生活を送る浅井航は、飲み屋で知り合った笹川啓介の会社「デッドモーニング」で働くことになる。そこは、孤立死や自殺など、わけありの死に方をした人たちの部屋を片付ける、特殊清掃専門の会社だった。
死の痕跡がありありと残された現場に衝撃を受け、失敗つづきの浅井だが、飄々としている笹川も何かを抱えているようでーー。
人の死の形が毎話描写される作品で、会社の始業前に読んでいたのですが、いつも上手く切り替えが出来ないまま、沈んだ顔で仕事に入っていました、仕事せずに続きを読んでいたくて(笑)
見方を変えればちょっとホラーにも感じる死の跡が残された部屋。
蛆や蠅は、うわぁと思ったけれど、でもいつも虫に対して感じているような拒否感ではなくて、なんというか、そういう描写はあるだろうなとは思っていたし、思ったよりも受け入れられた、というか、虫の描写というより、人の死のことなのだという描写の仕方が為されていて、興味深く読むことができた。
自分がどう死ぬかなんて分からない。もしかしたら自分の最期も一人きりかもしれない。
そういえば『死』は客観的にしか書けない出来事なのかぁ、と思ったり。
『死』ってなんだろう、って漠然と考えたり。
私は『孤独死』という言葉の方が聞き馴染みがあって、作中では『孤立死』という言葉が使われていました。
『孤独死』は一人きりで亡くなること。
『孤立死』は社会的に孤立した状態で亡くなること。
だそうです。
何かしらのコミュニティに属していなければ『孤立死』と呼ばれる、らしい。
どちらも「誰にも気付かれずにひっそりと亡くなる」というのは一緒。
『生きる』ってなんだろう
『自分』ってなんだろう
という日々の問いかけに
『死』ってなんだろう
がプラスされてしまいました。考えることが尽きないっていうのは、疲れるけど、有難くも思います。
突然自分にやってくるかもしれない緊急性のあるイベント。
例えば人が目の前で倒れていたり。
実際の日常の中で疑似体験させてもらったり、ニュースで事件や事例を知ったり、小説などのフィクションによって考える機会をもらったり、そうやって準備していけるのはすごく助かる。
いつかの時に、動ける自分を作っていけると良いなぁと思う。
まだ遅くないはず、なんだ、たぶん。