推しを推す、そして万物に感謝する。

元書店員。日常のオススメやアレコレの話を。

正式名称・芥川龍之介賞と直木三十五賞

お疲れ様です。

 

 

今日、職場の先輩に「くりこさんは芥川賞とか、そういう受賞作って読む?」と聞かれました。

私が元書店員だということをご存じなので、振ってくださる話題もそういうものが多い気がします。

 

優しい。

 

そして、私は残念ながらのお返事。

 

「あ、読まないです」

 

申し訳ない。

 

 

「話題の商品についていこう」というやる気を、今まで生きてきて感じたことがない。流行り物も気にしなければ、誘いにも上手く乗れない。

申し訳ない。

 

大好きな仕事のホットワードくらい、自分自身に取り込んだらどうだと思わなくもないんだけれど、どうしてかな、負けず嫌いだからだな。

 

 

売れているから、で手に入れるなんて、なんか世間に流されてるみたい、何かに負けたみたい。

 

 

……と思っていたのは、高校生のころまでだった気がする。

 

 

ある日、母が知り合いの方から東野圭吾さんの小説を借りてきた。

母も負けず嫌いだ。

どれくらい負けず嫌いかというと、私と同じように売れているものだからと手を出すことをしないし、弟にゲームに誘われた時に

 

「負けるのが嫌だから、お前とゲームはしない」

 

と明朗な声で返したくらいに負けず嫌いだ。

だから人に借りなければ母も東野圭吾さんの作品を読むことはなかったかもしれない。私もお借りして読んだ。

 

そうして気が付いた。

 

 

「やっぱ売れてる人の本って、めちゃくちゃ面白いんだな」

 

 

とはいえ、それでも「売れてるんだ。じゃあ買おうかな」という気持ちが生まれることはなかった。

でも「売れているものだから」と排除することは無くなって、売れているものは自然と目に入るし、手に取るし、それで私が「面白そうだ」と思ったらレジに持っていけばいいんだ、と考えることができるようになった。

 

負けず嫌い×天邪鬼 はめんどくさい生き物だなと思う。

 

 

お前ほんとに本好きかよ、というツッコミが痛いほど突き刺さるのですが、先輩の質問を受けてようやく

 

あ、そういえば、そんな時期だな、

 

と芥川・直木賞のことを思い出した。

おめでとうございます。

 

 

最近のニュースと言えば、感染症の話ばかりだったので、(昨日はバイデンさんのご就任の話もありましたが)

先輩から芥川賞の話を聞いて「へぇー!」とアホっぽい声を出し、

最近の芸能人の話を聞いて「へぇー!」とコイツなんも知らねぇなと丸わかりの声を出した。

 

 

「本屋さんの人たちが陳列で大変だっていう映像が映ってたよ」

 

という先輩の話に

 

「はは、それ大きい本屋さんだけっすよ」

 

とちょっと尖った声が出てしまったことは、本当に反省している。

在庫確保の問題はさ、難しいよねぇ。

もちろん大きい本屋さんが悪いわけじゃないし、取次に文句言ってもしょうがない、データが「おめぇんとこに在庫あっても売れねえっしょ」って言われているわけじゃなくて(と信じたい)、「あの大きい本屋さんに入れた方がたくさん売れるぞ」という期待による配本の偏りなのだ、と思ってるけど、それでもやっぱり、未だに悔しいよね、たくさん入荷しても捌ききる自信があるかと問われれば、それもないんだけどね。

 

商売だから、仕方ない。

みんな一生懸命生きている。

 

 

とにかく、おめでとうございます。

出版業界がますます盛り上がりますようお祈り申し上げますとともに、それを一読者としても楽しみにしています。

 

 

西條奈加さんの作品はいくつか読んだことがあります。

面白いです。

 

最初に読んだのは『まるまるの毬』でした。

まるまるの毬(講談社文庫)

出版社:講談社

ISBNコード:9784062936873

親子三代で菓子を商う「南星屋」は、売り切れご免の繁盛店。武家の身分を捨てて職人となった治兵衛を主に、出戻り娘のお永とひと粒種の看板娘、お君が切り盛りするこの店には、他人に言えぬ秘密があった。愛嬌があふれ、揺るぎない人の心の温かさを描いた、読み味絶品の時代小説。吉川英治文学新人賞受賞作。

た、たいへんだー!!!!みたいな大声で大勢が騒いで事件がうわああ!!!みたいな雰囲気ではなくて、私が今まで読んできた中ではすごく静かな文章でした。

それでも面白い。

「あれ、時代小説って私でも面白く読めるのかも」と新しいジャンルへのチャレンジの機会をくれた一冊です。

 

善人長屋シリーズ、神楽坂日記シリーズが売れているのを「お、面白そう……読みたい……」と横目に見つつ(なかなかそこにたどり着くには積読本が多すぎる)、

 

『善人長屋シリーズ』 出版社:新潮社 

 

[rakuten:book:19637899:detail]

『神楽坂日記シリーズ』 出版社:東京創元社

 

単独の作品であれば手軽に読めるはずだ、とよく分からない理論を引っ張り出して

[rakuten:book:19382081:detail]

[rakuten:rakutenkobo-ebooks:18032158:detail]

睦月童(PHP文芸文庫)

出版社:PHP研究者

ISBNコード:9784569768700

 

 

[rakuten:book:19102407:detail]

[rakuten:rakutenkobo-ebooks:17333237:detail]

秋葉原先留交番ゆうれい付き(角川文庫)

出版社:KADOKAWA

ISBNコード:9784041067529

 

を読んだ。

秋葉原先留交番ゆうれい付き』の方は、最初に読んだ『まるまるの毬』に比べて、オタクの登場人物だとかポップな感じがあって、こんなに違うものを書かれるのかと驚いた。

そっちも面白かったんだけれど、私の好みはやっぱり時代小説の方かなと思って、作品リストを検索すると時代物の方が比率が高いように見えて、へへ、いっぱい楽しみが、こんなにも、ありがたいことです。へへへ。

 

読むのが遅いので、すぐには読み進められませんが、順番に読んでいきたいです。

 

 

最初に自分で選んで買った時代小説が西條奈加さんの作品で良かった。

読み終わってそう思ったことを今でも覚えています。

 

 

改めまして、受賞おめでとうございました!