書店員が全集中の呼吸を会得したって在庫は増えん
お疲れ様です。
鬼滅の刃、最終巻が発売されましたね。
今年は本当に鬼滅の関係がすごかった。
新聞も大手新聞5社が「完結巻記念全面広告」なるものを掲載したとか、メルカリでそれが売られているとか、価格が高騰しているとか。
書店員の皆さまにおかれましては、クリスマス関係のお仕事も増えた中、本当にお疲れ様でございました。
いや、まだ継続中だよな。
お疲れ様でございます。
クリスマスのラッピング。
図書カードの大量発注。
に紛れて、鬼滅の刃最終巻の在庫確認の問い合わせ。
レジは大行列。
電話を取る人がいません店長。
在庫がない事に対して「何故ないのか」という意味のないお客様の怒り。無いものは無いんだ。こっちだって在庫を増やせるものなら増やしたい。
ラッピング作業の場所を増やすために普段フェアのために使っている机をレジの近くに配置する。いやまて、その机は鬼滅の刃最終巻を2か所、3か所に置くために取っておかなくてはいけないんだ。そんなじゃあどうすれば。あわわラッピングが追いつきません店長。
鬼滅の刃一冊の会計が多すぎて値段を覚えてしまい、レジに通す前から口がもう「○○円です」と言い始めてしまう。大変だお釣りの小銭が足りません店長。あっ、やめて、このタイミングで1万円札出すのやめて。
在庫ある分全部積んでおいてって言ったのにどうして積んでないの、すいません店長あれだけ積んでおいてまさか瞬殺だと思わずすいません。
鬼滅の刃の新刊どこですかってどうしてあんなに大きく案内を作ったのに見てくれないのお客様こちらですどうぞお一人様一冊までです、お客様、お一人様一冊までです、お客様、お客様??????
想像に難くありません。
炭治郎たちの戦いが終わっても、書店員たちの戦いは続きます。
まだ終われない、どころか、始まったばかりです。
無惨さまのように太陽光によってどうこうなるものではないし、そもそもお客様は鬼ではないわ大変失礼いたしました。
お疲れ様でございます。
手に入れたい気持ちが強ければ強いほど、お客様の要望も強くなります。
分かるよ、欲しいんだもんね。
でも無いものは無いし、もっと早くしてと言われても、誰一人としてのんびりダラダラとレジしている人もいないと思うの。
一生懸命、商品をお客様に渡すべく、頑張ったと思うよ。
それこそ炭治郎たちが呼吸によって身体能力を瞬間的に向上させるみたいに、いつになく全集中の呼吸で頑張ってると思う。
ツイッターで皆が「助けて炭治郎」って言ってるように聞こえた。これ以上炭治郎に何を背負わせるんだと思ったけど、炭治郎のおかげでこのようなことになっているのも確かで、いや、炭治郎だけじゃないな、皆さんホントどのキャラクターも最高ですよね、私は珠世さんが好き。
毎回話題の作品が発売になるたび、「そんなこと言ったってしょうがないじゃないか……」っていうご意見を受けた、という話を聞く。
今回も例に漏れず、というか。
あるんだよね、絶対あるんだ。
最終巻と合わせて、公式スピンオフ『鬼滅の刃 外伝』が発売されている。
最終巻を予約していたお客様が、受け取りに来て、その時初めて『外伝』が発売されていることを知り、
「最終巻を取り置きしてるんだから、普通に考えて外伝も一緒に取り置くでしょ?!」
的な感じのことを言ったらしい。
私が直接聞いたわけじゃないから、ニュアンスとか、言葉の強さの感じとか違ったかもしれないんだけれど、それでも働いていた身としては
まぁ、言う人もいるだろうな
と残念ながらそういう気持ちだった。
言うんだよな。知ってる。
『お客様からのクレームは、お店への期待の表れ』
という言葉もある。そう、期待していたから、それを裏切られて怒りが生まれる。分かる。お客様の気持ち分かる。そして接客をするものとしては、出来る限りお客様のご要望にはお応えしていきたい、という気持ちはある。
気持ちはあるのだ。
実際に出来るかどうかは別として。
気持ちがあるのに、どうして実際に行わないのかというと、出来ない理由があるからだ。
何も意地悪をして、お客さまのご要望を無視しているわけではない。
ずっと言ってきたけど、改めてお客様に伝えたいことがある。
これは書店に限らず、あらゆるサービス業、接客業、いや、全ての企業のお客様に対して当てはまることなので、こんな世界の端っこにあるようなブログで言ってもどうしようもないとは思うんだけど、世のお客さまに対応する労働者への労いもこめて、その職から離れた人間だからこそ言葉にしたい。
お客様がサービスを期待するのは間違っていない。
ただ、どんなサービスをするかの決定権は店側にある。
客層であったり、予算であったり、お店のコンセプトであったり、色んな理由はあると思うけれど、お店が行うサービス、行なわないサービスには、行われている、もしくは行なわれていない理由が必ずある。
それを「どうしてやらないんですか」って聞かれたら、答えられる理由なら回答することは出来ると思うけど、出来ないこと・やらないと決めていることに対して「やれよ!」と怒られてもどうしようもない。
「こうしてもらえたら嬉しい」という未来への要望に対して、検討したり、現サービスを改善したりすることはあるかもしれないけど、「何故今やっていないんだ?!」と怒られると困る。
その店はそういうルールでやっているからだ。
アメリカの友達の家に行って、玄関から上がらせてもらう時に、その友達が靴を履いたまま家の中に入っていったとして「なんで靴を脱がないんだ!!!!」ってキレたりしないと思う。
それは、そこのルールがあることを分かっているからじゃないかと思うのだけれど、お店を利用する際も、同じようなことだと思えば、、、どうですか。
怒ることではないと思うんだ。
レジ袋の有料化に便乗して、紙袋も有料にしているお店が多いけど、「なんで有料なんだ!!!!」ってキレても仕方なくありませんか?
なんでって言われても、ウチは有料でやろうって決まったからですぅ……ってなるしかない。
それが嫌で別のお店に行くこともあるでしょう。
お店もそれじゃ困るから、出来る限りのサービスをしようと頑張る。
そう。お店側も精一杯お客様のために頑張らざるを得ない。それが商売に繋がるから。それでも行わないサービスがあるのなら、それは出来ない、もしくはやらない、と判断したものだからだと思いませんか。
店員さんは人間だし、お客様も人間だし、人間の気持ち、全く分からないってことないと思う。ううん、中にはそういう人もいるかもしれないけど。
お店側は明らかに利用客に歩み寄ろうと努力しているはずだから、どうかお客様もそれを考えた上でご意見を伝えてほしい。
もちろん誰もが上手に接客できるわけじゃないし、ミスもあると思うから、言うべきことは言っていいと思う。
今回の『鬼滅の刃 外伝』の取り置きに関して言えば、予約の際に「外伝も同時に発売されますが、こちらはよろしいですか?」って聞くことが出来たかもしれない。
でも、それだって、「外伝どうされますか?」ってお客様全員に平等に出来ない可能性もある。
入荷数が未定だったり、小さいお店なら取り置きする場所がそもそもほとんどなくてレジの中が大変なことになるかもしれない。
お店によっては取り置きよりも、たまたま通って買っていくいつもの常連さんのために出来るだけ予約はしないで店頭に来てくれた人に売りたいかもしれない。
最終巻を予約した方全員に行き渡る在庫がないから、こちらは予約なしにしようって思うお店もあったかもしれない。
お客様に平等にできないサービスはやめようって思ったお店もあったかもしれない。
「あの人は予約できたって言ってましたけど!!!」
みたいなご意見が予想されるもの。
お店ごとにやり方や考え方や売る形はあって、やっぱりそれはお客様にどう言われようと変えられない部分はあると思う。
要望に応えられるタイミング、状況、色々あると思う。
長くなってしまった。
すいません。
どうか、お客さんと店員さん、双方が笑えるお店が増えますように。
遠くから願う事しかできない自分をお許しください。
本屋さんが素敵な場所だって、お客さんも店員さんも思えますように。
本屋好きはそんなことを願っています。
(それはそれとして鬼滅の刃、完結おめでとうございます!!)