推しを推す、そして万物に感謝する。

元書店員。日常のオススメやアレコレの話を。

強運が強運たる世界よりも

お疲れ様です。

 

 

先日、夕方。

ああ明日の朝ごはんがないぞ、パンを買いに行こう、と思い立って外に出た。

 

涼しい夜のお散歩である。とても気持ちいい。家を出た時はまだ明るさがあったのに、お店を出るともう真っ暗だった。ちょっと悪いことをしている気持ちになってワクワクする。
エコバッグをぶら下げて中身をガサガサ鳴らしながら帰っていると、暗がりの足元に何かがチラリと見えた気がした。

見下ろす。

 

「にゃぁ」

 

猫である。可愛い可愛い猫だった。色は暗くてよく見えないが、恐らく薄い茶色だ。人懐こい。

この袋に食べ物が入っているのを分かっていたのかもしれない。私が歩いている左斜め後ろのかなり近い位置をついてくる。私は左手にエコバッグをぶら下げていた。

立ち止まると向こうも止まる。本当に人懐こい。裏道で明かりがほとんどない道で、車も人もまばらである。

 

そこを入ってくる車はだからこそ慣れている人が多くて、スピードを緩めたりする車は少ない。
車が来るたびに私は猫が間違って道の方に行ってしまったらどうしようと怯えながら立ち止まって、猫と見合った。この視線が外れたら走り出してしまうのではないかと怖かった。道と猫の間に入るようにそっと動いてみても猫は逃げ出そうともせず、ずっとニャアニャアと私を見上げて鳴き続ける。
車が行きすぎる。4台くらいやり過ごして、道が静かになって、私はまた歩き出した。振り返る。猫はついてくる。家までついてこられたら私はどうすればいいのだろう。
暗がりでしっかり見えなかったけど、帰ってきて、ふと「とても綺麗だったから飼い猫だったのかもしれない」と思った。


飼い猫だったらどうしてあげたら良かったんだろう。

 

野良猫だったらどうしてあげたら良かったんだろう。

 

してあげられることはあったんだろうか、それとも無かったんだろうか。

「大人ってすごい人たちだ」と強く思った子供時代ではなかったと思うけど、それでも考えていた以上に歳を取ることには何の意味もなくて、私に限ってはこういう時とにかく無力であることが判明している。


持っている知識が少ない。

持っている知識すらうまく使えなくては意味がない。

小さき生き物に手を差し伸べられないで、いったい私は……うっ、ネコチャン……可愛かった……飼い猫ならおうちにちゃんと帰りますように、飼い猫でないなら、、、飼い猫でありますように。ちゃんと安全な場所で幸せに生きていきますように。力無き人間でごめんな。

 

 

強運の持ち主(文春文庫)

著者:瀬尾まいこ 出版社:文藝春秋

ISBNコード:9784167768010

元OL、営業の仕事で鍛えた話術を活かし、ルイーズ吉田という名前で占い師に転身。ショッピングセンターの片隅で、悩みを抱える人たちの背中を押す。

「久しぶりに本を読みたい」という方にお貸しする本を考えていて、占いを好きな人だったのでこれにしようかな、と手に取りました。

冒頭どんな感じだったっけな、と思って、ちらりとページをめくってみたら

 

これで三千円、ちょろいものだ。

 

って最初からとばしてた。ルイーズ吉田……。

勘違いされては困るのだが、これはとても優しい作品です。瀬尾まいこさんが書かれたとてもとても優しい作品です。

 

でも占い好きの人に貸すのは止めておいた(笑)

 

他の瀬尾まいこさんの作品をお貸しして、それで「読みやすい」とか「面白かった」とかお言葉をいただいたなら、今度こそお貸ししようと思う。

 

楽しんでもらえるといいな。

 

 

 

誰もが強運の持ち主だったらいいのにな、と思って、そうしたら強運が当たり前のことになって誰も強運だとは判断されなくなるだろうから、なんて言うんだろう、幸福度の高い世界、とかになるんだろうか。

 

いいな、幸福度の高い、、、

 

いや、みんな幸せになってくれ……

猫も犬も人間も、みんなどうにか幸せになってくれ……