実家に帰らせていただきます
お疲れ様です。
今の場所に引っ越してから実家が近くなったので、かなりの頻度で顔を出している気がする。
大抵は何かしら用事があって、「今度帰るわぁ」と言って、「はいよー」と返事があって、フラッと実家に帰ってダラァっと自分の住まいへ帰ってくる。
先日はただ遊びに実家に行った。
普段は何かしらの用事を済ませて、その合間に一緒にご飯を食べたり、テレビを見たり、なんだかんだしているともう夜が来て、寝て、すぐ起きるはずもなく、ちょっと過ごしたら「じゃあ帰るわぁ」と言ってお暇する。
なんの用事もないと、当たり前かもしれないけれど、ずっと家にいて、家族と過ごすことになる。
元々知っていたことではあるんだけれど、今回シルバーウィークに帰ったことにより、改めて、
あれ……もしや、私の父ってかわいいな……?
ということに気が付いた。
食後にかりんとうを食べながら、カロリーゼロのコーラを飲み、そのコーラをかかげながら私に向かって「ほら、カロリーがないと罪悪感が無いでしょ?」と嬉しそうに言う。
かりんとうを食べながら。
……………。
かりんとう、空気とちゃうぞ。
何かの理論で彼の中でかりんとうはそもそもゼロカロリーなのかもしれない。
父は私にもかりんとうを食べるように勧める。目の前に食べ物があると手を伸ばしてしまう性質をもつ私は、まんまとその甘味をつまんで口に運ぶ。
父はしてやったりという顔をして、いや、あれは勝ち誇ったような顔と言える。こちらを見て
カロリーを摂取していると分かっていながらも、お前は目の前に出されるかりんとうから目を逸らすことができないんだろう、ふふふ
という声が聞こえてきそうな顔である。
「かりんとう好きなんですよ」
と私が言い訳のように口にすると、父は嬉しそうに笑う。
「遺伝だね」
いや、単純な好みの一致。
……食の好みは遺伝するんだろうか。それはそれで面白いなと思うけれど、「遺伝だから」と言われるよりも、「親がよく食べてたお菓子だから」とか「親がよく聴いてた曲だから」みたいな刷り込みが原因だと言われた方が、なんだか良い。
良いっていうのは、なんというか、遺伝のように「本人の意思関係なく、抗えないもの」ではなく「貴方が好きなものだから魅力的に見えたの」という方が、人と人の関係が見えてきて温かい気持ちになる気がしませんか、ということである。
そもそも私はかりんとうを口に含むときに、罪悪感など持ち合わせておらぬ。
最近気が付いたのだが、私はどうやらかりんとうが好きらしいのだ。
好きなものを食べている時に罪悪を感じているなど勿体ない。かりんとうと向き合うために、「美味しい」以外の感情は必要ない(過激派)。
なんにせよ、「俺と娘、同じものが好きー♪」みたいな私も随分もういい歳だと思うんですけれども、なんだかずっと良いもののように思ってもらえているらしく、嬉しい限りです。
私も父と同じものが好きであること、嫌ではない、ですよ。
ところで、弟も可愛い。
私が随分もういい歳なので、彼もいい歳のはずである。見た目もおっさんになったし、もちろん声も低ければ、あのいつかのような可愛らしいものなど何も残っていない、はず、だった。
私がアパートに帰る日、弟は仕事だったので、朝起きてから仕事に行くまでしか、顔を見るタイミングがないということである。私も珍しく早起きできたので、仕事に行く彼を労おうと、玄関までお見送りをすることにした。
「いってらっしゃい、気を付けてー」
「気を付けて」と言うと事故率が下がるとか何処かで聞きかじってから、私は「気を付けて」を言えるときは言うようにしている。
どこで誰がしゃべっていたのか、何一つ覚えていないので、もしかしたら全くのデマである可能性もあるのだが、「気を付けてね」とひと言言うだけで何か良くないことを回避できるかもしれないということを思うと、まぁ、減るもんじゃなし、言っておくかね、と思う。
眠くて起きられない時は無理だ。頑張らない。ちゃんと起きた時は、顔を見れた時は、言えるときは言うようにしている。
靴を履いて、玄関の取っ手に手をかけようとして、ふっと振り返ると彼は
「今日帰るの?」
と聞いてきた。
そのつもりだと返すと、「ふーん」と言った後で
「俺、今日早く帰ってくるけど」
とだけ言って出ていった。
まっ、え、なぁに????????????
なぁに、それ、可愛いね??????????
今日俺早く帰ってくる日だから、姉さんがちょっと帰る時間を遅らせたらまた会えるのに、すぐ帰るの?って意味????????違う?????????おねぇさんにはそう聞こえましたけど??????????????????????????????????????????????????????????????????????
…………。
待ったよね。
彼の帰宅を。
晩ご飯まで一緒に食べたよね。
夜までおりましたとも。
いつ帰るつもりなんかなあ、自分。とか思いながら、おりましたとも。
ありがたいね。
おっさん と おっさん のくせに、可愛いね。
用事がなくても帰っちゃうね。
ありがとうシルバーウィーク。
涙雨とセレナーデ(KCデラックス)
ISBNコード:9784063773286
ある日突然、音楽の授業中に光に包まれて、明治40年にタイムスリップしてしまった元気な女子高生・陽菜(ひな)。そこで出逢ったのは、愁いを秘めた御曹司・本郷。そして自分とそっくりな少女は雛子(ひなこ)という名前で……。
ちょっと謎有りの、大好物タイムスリップものです。明治って、和と洋が入り乱れてとっても魅力的な雰囲気の時代だと思うので、その舞台にもドキドキします。
現代っ子の陽菜が突然 明治時代に放り出されるわけですから、もう何が何やら、これが馬車ってやつか、いや、馬車って何ぞやみたいな混乱もありつつ、人に助けられつつ、翻弄されつつ。
持ち前の明るさから、前を見据える瞳の強さたるや。その力に元気をもらえるキャラクターだな、と思っていると、恋の話も入ってきて、ああ、でも陽菜は恋をしたってその時代の人間ではないじゃないの、などとハラハラしてしまって、どんな結末を迎えるのか、楽しみで仕方ありません。ぜひ、オススメです。
試し読みしてその後の購入に繋がらないかなぁー!!(大声)
https://books.rakuten.co.jp/rk/bfccf1a0df053c0784c0558dd471f8cb/?l-id=search-c-item-text-12
タイムスリップしたらたぶん私は一人じゃ生きていけないだろうから、誰かに助けを求めなくてはいけないよな……。
方向音痴というスキルがかなりマイナスになりそうな気配がします。
今からでも直せないだろうか、鍛錬によって緩和できるならそれもよし。
さて、今度はいつ実家に帰ろうかな……。
愛されているという自覚を得られやすすぎる。