推しを推す、そして万物に感謝する。

元書店員。日常のオススメやアレコレの話を。

大事なことなので2回言いました。

お疲れ様です。

 

 

知り合いにもうすぐ出産予定の方がいらっしゃいます。

名前を考えている、ということで候補名を教えていただいたのですが、とても美しい漢字で「うわあ綺麗な漢字ですね!」という思い浮かんだ感想をそのまま捻ることなく、すぐに口に出す、というやり取りを先日したところです。

 

キラキラネームって言われないかなあ、などご心配されていましたが、私は全然そんな風に思わなかった。

 

次いで、どんな名前だと困らせるかな、など気にされていて、私も一緒に考えた。

 

読み方が難しかったら、担任の先生は困るかもしれない。

でも、子供たちなんて最初は平仮名で相手の名前を知っていくのだろうから、気にするのは大人の目線の人たちなんだよな。あまりにも突飛だったり、そのお子さんが大きくなったときに嫌な気持ちになるような名前だったりしない限りは、私はどんな名前でもいいと思っている。

(ただし生きづらくなるような高度なレベルのものは、私なら控えたい。)

 

私を例に挙げると、私は私の名前を嫌いではなくて、どちらかといえば好きだと思っている。素敵な名前を頂きました。

 

一つ上げるとするなら、結構聞き取り間違いされることがあるくらい。

 

私の本名が○○とすると、「×〇さんですか?」と惜しいところで間違われたりする。

だからもし細かいところまで気にするなら、聞き取りやすい名前だとコミュニケーションがスムーズになるのかもしれないな、とは考えた。でも些細なことだし、名前の訂正も含めてコミュニケーションだと思えば、案外そのやり取りも悪くない。

 

そんなことを考えていたら、幼少期の記憶が一つ思い出された。

 

 

 

小さい頃にユニバーサルスタジオジャパンに遊びに行った。

 

今はなき『E.T.アドベンチャー』というアトラクションに乗った時の話だ。

E.T.』という1982年に日本で公開された映画が題材のアトラクション。映画の監督・製作はスティーヴン・スピルバーグさん。映画に疎すぎる私でも知っている名前の方の作品で、ええと、つまり、めちゃヒットした。(情報の浅さが露呈する)

 

小さな宇宙人『E.T.』と、『E.T.』を保護した少年の心温まるSF映画、です。

 

アトラクション内では、小さな船のような乗り物に乗って、舞台であるアメリカのビルがニョキニョキ生えている街並みの上を飛ぶような感じです。星空の下もゆったりと散歩したし、なんといっても一番の目玉はアトラクションのラスト。

 

 

E.T.が、アトラクションに乗っている子供たちの名前を呼んでくれるのだ。

 

 

バイバイ、と手を振りながら見送ってくれる姿は映画ファンなら泣いてしまうのかもしれない。

 

仕組みとしては、アトラクションの入口でスタッフの方に自分の名前を伝えておいて、それをラストに読んでもらえるようなシステム。

あ、仕組みとか言わんほうがいいんか……入口のお兄さん、もしくはお姉さんが E.T. に僕たち私たちお友達の名前をこっそり伝えてくれている、らしい。

 

両親と、兄と、私。

 

子供の名前を呼んでくれるとのことなので、兄と私の名前が出口で待ち構える E.T. にはインプットされているというわけだ。

 

 

「○○です!」

 

私は元気に入口の番をしていたお姉さんに自分の名前を伝える。

 

 

アトラクションに入って、いよいよラスト、名前を呼んでもらえるとワクワクしていた私に振りかかる、不条理。

 

 

 

「バイバイ 、、 ×〇 、、」

 

 

 

誰だ?

 

 

 

切なそうな、且つ未来への希望を持たせるような声音で呼ばれる私どころか両親も知らない名前(笑)

もう、簡単には会えなくなるだろう友達の名を呼ぶ E.T.

 

 

さよなら、さよなら、って言ってるよ、×〇さん、、、

 

 

誰か知らんけど……

 

 

 

ちなみに、兄は入口でどうやらふざけていたらしく、私の後に名前を呼ばれていたのだが、

 

 

 

「バイバイ 、、ゴンザレス 、、」

 

 

 

 

ホントに誰。

 

 

誰一人として名前を呼ばれない船が出来上がったわけですが、兄のお陰で大爆笑でした。いい思い出です。

 

 

 

物語の中で、人が人の名前を呼ぶ時の僅かな感情の差みたいなものが好き。

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伏 贋作・里見八犬伝(文春文庫)

著者:桜庭一樹 出版社:文藝春秋

ISBNコード:9784167784065

江戸時代。伏-犬人間と呼ばれるものによる凶悪事件が頻発。幕府はその首に懸賞金をかけた。小さな少女・浜路は兄に誘われて伏を狩る賞金稼ぎとなるが……。

ぶ厚い昔の物語です。アニメーション映画も見たのですが、原作のアクションシーンが映像化するとまた迫力が違って感じられて、絵がめちゃくちゃ綺麗で、切なくて、原作を読んでから映画を見たのですが、逆だったらどんな風に感じたかなとかどうしようもないことを考えてしまったりして、しばらくの間余韻に浸りました。

妙に人間臭い伏に浜路が出会うとき、それぞれにどんな感情が生まれるのか。

彼らにもそれぞれ名前があるのですが、名前を呼んだり呼ばれたりしている存在が狩り、狩られる、というのはやっぱり苦しい。

ミステリなのか恋愛ものなのかアクションなのか、どれも大きい比率で物語の中に存在していて、こんな贅沢な、え、いいんですか? みたいな気持ちになります。

古い口調や街並みの描写も雰囲気があって好きです。作ったようなセリフ回しがカギカッコの中にあるとワクワクします。

 

ぜひ。

 

 

 

 

結局私たちは E.T. のお友達にはなれなかった。

 

もし兄の名前が本当にゴンザレスだったとしても、お友達にはなれなかったと思う。

 

もし兄の名前が本当にゴンザレスだったとしたら、私は両親に何か思うことがあったと思う。

 

 

名前って大事だなって思う。

 

 

……名前って大事だなって思う。